同名の小説のコミカライズですが、コミックの作者と小説の挿絵を書いている方が同じなので、表紙ではコミックなのか小説なのかぱっと見み気付きづらく、購入時には注意してください。
ゲーム世界に転生ものですが、主役は女性(TSではなく女性が女性のキャラクターに転生します)で転生先は乙女ゲームです。
乙女ゲームといえば女性向けですが、内容も絵柄も、男性読者であっても充分に楽しめる作品です。
転生先の登場人物はゲーム内での敵役でこの設定自体は他作品でも見られますが、8才になった時点の怪我で突然「私は転生した」と覚醒するのがちょっと変わっています。
前世ではそれなりに活発が17才の女子高生だったようで、覚醒後はお転婆な性格と行動を示すようになります。
1巻ほぼまるごと幼少期にあてていて、舞台の説明を行うと共に、今後の展開に備えつつキャラクターの掘り下げもこなすという質の高い構成に思えます。
単にコミックとしても幼少期の話は面白く、「破天荒な貴族の子供が周囲に好影響を与える」という1つの物語として成り立っていて読み応えもあります。
女性はもちろん男性にもお勧めできる作品です。
絵柄
さすがに挿絵を既に描いている方なので、キャラクターの統一感が崩れることなく自由に動かしている感じがします。
女性向けコミックは主線が細いことが多いですが、この作品は男性向けの線に近く男性が見ても違和感はあまりないはずです。
コメディっぽい場面でのデフォルメもよいのですが、おなじ場面にツッコミ役的なメイドが描かれている構成がとても良いと思います。
このメイドはデフォルメされていない場合が多く、「他の人が見たらこう思うだろう」という客観的な視線を与えており、主役のコミカルさに引っ張られすぎない適度な距離感を保つ重要な要素ではないでしょうか。
絵柄や画面構成共に安心して見られます。
脳内会議と飛び抜けない才能
主役が脳内会議を行う作品はありますが、この作品も脳内会議が行われます。
ただし頻繁にではなく、重要な方針決定時など限定的な演出なのでクドくなく丁度良い塩梅です。
転生もといえばチート能力ですが、この作品の主役にはチート能力がありません。
一応設定的には希少価値のある魔法の才能はありますが、作中で「土ぼっこ」と呼ばれる「少し地面を盛り上げるだけの土魔法」しかつかえず、しかも努力しても「土ぼっこ」の高さが変わる程度の代物で、チート能力とはまったく違います。
この努力も方向がちがったようで、最終的に「趣味は土いじり(農業)」という形に落ち着いてしまします。
かといって前世の知識を活かして変革や産業革命を、という場面もありません。
転生先のゲーム世界の知識を持っていると言う点では十分なチートではあるのですが、作品を読むとこの知識の恩恵はほどんどん崩れていくためこれままたチートとはいい難く。
主役の設定自体にも魅力のある作品です。
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2巻が2018/10/25に発売されました。
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