異世界のチートものですが、画力と話の構成が上手く、軽目で楽しめる作品です。
自分にマイナスの設定を課すことで過剰なチートを得るというタイプですが、そのマイナスに「記憶」を選んだため、転移ものであるにかかわらず転移前の状態がないも同然になっている点が特徴です。
見方をかえれば、異世界転移ではなく単に異様に強い現地人の物語ともとれてしまいます。
チート能力の他に転移を行った女神を仲間にしているなどお約束的な部分が目に付くこともありますが、初期においては適度な突っ込み役と程度の存在なのでまだ良いように思います。
タイトルにある通り「召喚士」なのでモンスターを手駒に加えていき、そこがやはり面白さの1つだと思います。主人公以外が活躍する場面が見られますので。
ただし召喚というより従属という感じで、某ボールを投げて対象を捕まえるゲームのような仕組みに思え、「別の世界から何かを呼び出して用いる」というのを想像すると違和感があるかもしれません。
基本的に戦闘メインらしく、そのあたりの割り切りが読みやすさに繋がっていると思います。
話が進むに連れて妙に戦闘狂(バトルジャンキー)と強調する場面が多く、キャラクターの特徴付けのためとはいえ何度も繰り返されると辟易する部分もあります。
具体的な描写はほぼないものの2巻にてセックスシーンがでてきます。
鈍感主人公ではないので流れ的に違和感もすくなく嫌な感じは受けませんが、そこまでの必要性も感じませんでした。
「黒の」と付くあたりに中2感が強いですが、その点はあまり気にせず気楽に読めて楽しめる作品だと思います。
『黒の召喚士』の特徴
- 転移物なのに転移前の記憶がない主人公
- モンスターを引き連れての活躍
- 勢いのある戦闘シーン
- 敵対者は必要に応じて命を奪い、後悔などはなし
- 転移を行う女神も共に行動
『黒の召喚士』の絵柄
絵柄に特徴もありつつデッサンに狂いもなく、アングルの変化にもきっちり対応していて上手い絵です。
簡略化が強いですが手抜きにはみえませんし、むしろ背景やアクションシーンの効果描写を加味すると丁度良い人物表現に思えます。
頑張りすぎてごちゃごちゃしてしまい見づらくなった作品はわりと多くありますので。
対して質感の描写は少し微妙です。
医師や布や金属等の表現が弱くみえ、それらの存在感が薄く感じます。
とはいえ問題に思える程ではなく、充分に商業レベルだと思いますので安心して購入できます。
『黒の召喚士』の見所
「モンスター」が見所です。
せっかくの召喚ものなので、やはりモンスターの成長や関係性の変化などが見所でしょう。
戦闘メインなだけあって強者対主人公というだけではなくなるため場面に起伏も生じますし、この起伏が作品を飽きさせない要素になりえます。
残念なのは無数のモンスターを引き連れるようなものではなく、強い固体の少数精鋭になりそうな点でしょうか。
いろいろなモンスターが見られるという楽しみはあまり期待できないかもしれません。
『黒の召喚士』のKindle予約情報
2巻が2018/11/25に発売されました。
『黒の召喚士』のKindle新刊既刊情報
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