植物性の紙と活版技術が存在する時代で、本が革表紙に包まれていて分厚く高価なものである時代が舞台のお話。
「大魔術師」とありますが、「魔術書を集める魔術師の旅」や「魔術書を使った魔術師同士のバトルもの」などではなく、もっと静かな作品です。
本の意義や価値を非常に丁寧に描いていて、それが物語の核になり主人公(エルフと人の混血?)を動かし行動させる物語です。
本を図書館で扱い世間的にも重要な職業と認識されているのが「司書」で、主要な人物だ就いている職でもあります。
現実の司書業務にも関連する内容に加えて、魔術の存在や動物と言葉を交わす(言葉以外でも意思を通じる方法がある描写ですが)などのファンタジー要素もあり、本から繋がる要素が含まれています。
そのため「司書=本の整理をしているだけ」というもではなく、プログラマを魔術師(ウィザード)に例えることもありますがそれの司書版というと分かりやすいかもしれません。
書物の修復自体が魔術的な役割を担うこともあり、日常的な業務にファンタジー的な別の役割も与えられているので、司書経験者にはまた違った楽しみ方ができるでしょう。
内容的にもですが漫画的にも読み応えがあり、一冊を読み終えたあとの満足感はかなりのものです。
余談ですが、物語のセリフでは「としょかん」を1文字で以下のように記述しています。
- 「くにがまえ」の中に「書」
実は現代日本でも以下のような略語が使われています。
- 「くにがまえ」の中に「ト」
この一文字で「図書館」と読ませる略語なので馴染みがない方には読みづらいかもしれませんが、業界用語でもあるので雰囲気づくりの重要な要素に思えます。
本を主題にした丁寧な物語は多くの人にお勧めできます。
『図書館の大魔術師』の特徴
- 本を核にした物語
- 少年の成長と冒険
- 司書が重要な存在
- 司書の現実の業務との類似性
- 動物(幻獣的なもの含む)との意思疎通と交流
- 妖精(ピクシー)のような小柄な種族
『図書館の大魔術師』の絵柄
丁寧かつ繊細な絵柄です。
キャラクターの造形、服装、小物、背景、モブ、etcの全てが高レベルで、絵に稚拙さはまったくありません。
世界丸ごとを描写するタイプの方のようで、コマの全てに一貫性があり、それが世界感を強固なものにしています。
顔の表現が微妙に古く、キャラクターの年齢と外見が微妙にずれているような印象もうけますが、設定などもあるでしょうし些細な点でしょう。
物語にしっかりと没入させてくれる良い絵です。
『図書館の大魔術師』の見所
「司書」が見所です。
「学者が無敵のヒーローに」という類いではなく、司書が概ね現実に沿ったちゃんとした職業として主役になっている点が良いです。
司書を単なる追加要素的な扱いにすることなく、地味な所は誇張せず地味に書きつつもしっかりと細部まで描いており、厚みを感じます。
また、業務に魔術に絡めて派手な演出もいれるなど見せ場を入れる要素が用意されていて、虚構の漫画として充分な見映えで表現されています。
司書職の人にも読んで貰いたいですね。
『図書館の大魔術師』のKindle予約情報
2巻が2018/11/7に発売されました。
『図書館の大魔術師』のKindle新刊既刊情報
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